エヴァが目ざめるとき

エヴァが目ざめるとき

エヴァが目ざめるとき

bbb: どこで見たかは忘れたが、前から読みたかった
人間の社会は疲弊して終焉が近い。そんな中、人間の脳にたくわえられた情報をチンパンジーの脳に移植する試みがなされる。
終章の「死」は、同時に人間全体の死でもある。グロッグの語る人間世界の状況は、もちろん物語の中のことだが、興味深い;

一つの大きな流れ[...]あらゆるものがそうなんだ。人類全体がどんどん短絡的にものを考えるようになってきている。頭のいい若者は研究なんかしない。投資家たちは、すぐに見返りが得られないものには一銭だって出そうとしない。政府も研究機関も、基礎研究には金を出さない。宇宙開発からも手を引きかけている。まだまだある。とにかく、なにもしようとしないんだ。人類はあきらめかけているんだよ。なにもかも放り出そうとしてるのさ(p151)

人類はおわる、だがその後もチンパンジーは生き抜かねばならない。そしてエヴァには両方の世界がわかる。
原書は1988年の作だが、こういう流れは今実際感じられる。
そういう世界全体の物語と、エヴァ自身の自己の確立が同時に進行する。