北杜夫全集 第13巻
- 作者: 北杜夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1977/09
- メディア: 単行本
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ref: ケストナー『雪の中の三人男』(どくとるマンボウ途中下車、p221)
どくとるマンボウ青春記
高校の時、試験が赤点だったりすると、撃沈した〜とか言っていた。先生も生徒も使っていたように思う。なんと、もしかしたら、この言い回しは戦争の名残りかもしれない:
まだ戦争中のなごりが残っていた時代であった。戦争中の大本営発表には「戦艦一隻轟沈、同一隻中破、航空母艦一隻大破」などと戦果があげられたものだ。その調子のよい男も、試験の結果を部屋の板戸に大きく書き記していた。「数学、中破。動物、大破。ドイツ語、轟沈」(p52)
この調子のよい男というのは、試験の前日に教科書の冒頭を2,3ページ、中ほどを開いてこれまた2,3ページ、そして最後をちょっぴりやって、「ああ、済んだ、済んだ」と言って安らかに寝てしまうという男である。
しかし、大本営発表とは轟沈の主が違っているようだ。大本営発表の轟沈は相手が、試験でいうなら数学が、沈んだのであって、試験の場合はこちらがぶくぶくと沈んだのである。
「とても手の出ぬ問題に、詩やらイタズラ書きをする行為もありふれていた」の下りを昔読み、中学だったか高校だったか、いつかの試験で真似して何やら和歌を書きつけたような気がする。結果は思い出せないから、書いて消したのかもしらん。
『マンボウおもちゃ箱』より(1)
(2)まで読んでから感想かこう。